仕事

アスペルガーで仕事が覚えられないと感じている方へ

仕事をしていて、「何度聞いても覚えられない」「同じミスを繰り返してしまう」と悩んでいませんか?
周囲から「なんでこんな簡単なことも覚えられないの?」「また同じこと言わせるの?」と言われて、傷ついていませんか?

また、職場でアスペルガー傾向のある部下や同僚がいて、「どうして何回説明しても覚えてくれないのか」「やる気がないのか?」と戸惑っている方もいるかもしれません。

私はアスペルガー傾向のある当事者であり、同じような壁に何度もぶつかってきました。
「仕事を覚える」という、誰にとっても当たり前のように思えることが、なぜここまで難しいのか。
この記事では、その背景と、実際にできる対処法を紹介します。


なぜアスペルガーは仕事が覚えにくいのか?

アスペルガー=記憶力がいい、というイメージを持たれがちですが、実際には「記憶の得意・不得意の偏り」が大きいのが特徴です。

以下のような理由から、仕事の習得に時間がかかることがあります。

1. 抽象的・あいまいな表現に弱い

たとえば「臨機応変に対応して」「感覚でやってみて」といった表現は、アスペの人にとって非常に難解です。
具体的なステップや判断基準がないまま教えられても、理解できずに混乱してしまいます。

結果として「言われた通りにやってるつもりなのに、違うと怒られる」ことを繰り返し、仕事が定着しづらくなります。

2. 作業手順の“背景”を理解しにくい

ただやり方を覚えるのではなく、「なぜそれをやるのか」「どんな場面で使うのか」といった“文脈”を同時に把握するのが苦手な傾向があります。
そのため、少しでも状況が変わると対応できず、「応用が利かない」と言われてしまうのです。

3. 感覚過敏や不安による注意力の低下

周囲の音や光、人の視線などに敏感な人も多く、それらが集中力や記憶力を奪います。
また、「また怒られるかも」「また間違えるかも」という不安やプレッシャーが強くなると、脳の処理能力が低下し、学習定着が難しくなります。


周囲が誤解しやすいポイント

■ 「やる気がないのでは?」という誤解

同じことを何度も聞いたり、メモをとっていても再びミスをする様子を見ると、周囲は「本気で覚える気がないのでは?」と感じてしまうことがあります。
しかし、本人は本当に一生懸命やっているケースがほとんどです。

記憶の仕組みや認知の仕方が「人と違う」だけで、「怠けている」「やる気がない」わけではありません。

■ 「普通ならできるはず」という思い込み

マニュアルを一度読んだだけで覚えられる人もいれば、実践を何十回も繰り返さないと身につかない人もいます。
アスペの人は、後者のように“身体に染みこませていく”タイプの学習が必要なことが多く、そのプロセスが違うだけです。


アスペルガーでも仕事を覚えやすくする工夫

1. 作業を「視覚化」する

言葉だけでは伝わりにくい手順は、図解・フローチャート・写真付きマニュアルなどを活用することで格段に理解しやすくなります。
文字よりも「目で見て覚える」方法の方が定着する場合も多いです。

2. 手順は具体的・順番通りに

「やり方をざっくり説明」ではなく、具体的な手順をステップバイステップで示すことが有効です。
例:「資料を確認して、問題がなければ印刷→ファイル名を“YYYYMM”形式で保存→完了報告をチャットに送る」

こういった明確なルールがあると安心して作業に取り組めます。

3. 一度に多くを詰め込まない

アスペの人は**ワーキングメモリ(作業記憶)**が少ない傾向があります。
一度にたくさんの情報を与えず、ひとつずつ段階的に覚えていくスタイルが合っています。

職場でも、「一気に教えてしまおう」とせず、教える側が小分けにする工夫が効果的です。

4. 失敗の理由を一緒に言語化する

ただ「違う」と言われても、アスペの人は「何がどう違ったのか」が分かりにくいことがあります。
間違えたときには、「ここでこう判断しちゃったんだね。でも本当は〜が必要だったんだよ」といった、フィードバックの言語化が大きな学びになります。


それでも覚えられないときはどうすれば?

環境や仕事の内容を見直す

「何をどうやっても仕事が覚えられない」と感じる場合、その仕事自体が自分の特性に合っていない可能性があります。
特性に合った職種を選ぶことで、ストレスなく働けるようになるケースも少なくありません。

以下のような仕事は、アスペルガー傾向のある人にとって覚えやすく、力を発揮しやすい傾向があります。

  • 明確なルールがある作業(データ入力、倉庫作業、製造ラインなど)
  • 一人で完結できる業務(在宅ワーク、プログラミング、ライティングなど)
  • 人との関わりが少ない仕事(モニタリング、点検、検査業務など)

転職や配置転換を前向きな選択肢として考えることも、自分らしく働く一歩になります。


まとめ:覚えられないのは、あなたのせいじゃない

仕事がなかなか覚えられないと、自分を責めてしまうかもしれません。
でも、それは「やる気がないから」でも「頭が悪いから」でもありません。

あなたにはあなたの記憶のスタイルや理解のペースがあるだけです。
必要なのは、“そのやり方に合った教え方・働き方”を見つけること。

周囲の人にも、それを理解し、支えてくれる存在がきっといます。

できないのではなく、合っていないだけ。
そのことに気づくことが、苦しさを手放す第一歩です。

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