仕事

アスペルガーで仕事ができないと感じている方へ

職場で「どうしてうまくいかないのだろう」「なぜこんなに周囲とズレてしまうのだろう」と悩む方の中には、アスペルガー傾向(現在では自閉スペクトラム症:ASD)を持つ方が少なくありません。

周囲の人が難なくこなしているように見える業務や人間関係の中で、自分だけがつまずいてしまう。
やる気はあるのに評価されない、自信をなくす、苦しさだけが積もっていく——。

また、同僚や部下にアスペルガー傾向のある方がいて、「なぜ指示が通じないのか」「どう接したらいいか分からない」と感じている方もいるかもしれません。

私自身もアスペルガー傾向があり、同じように仕事で苦労してきました。だから、その悩みはよくわかります。

この記事では、アスペルガーの特性と仕事上のつまずきやすいポイント、そして実際にどう向き合えばよいのかを、当事者としての経験も交えて解説していきます。


なぜアスペルガーは「仕事ができない」と感じやすいのか

1. あいまいな指示が理解できない

「それっぽく仕上げておいて」「臨機応変に対応して」
こういった曖昧な表現が、アスペルガーの人にとっては大きな壁になります。

言葉を文字通りに受け取りやすく、文脈や空気から意図を読み取るのが苦手なため、指示の本質を取り違えたり、行動できずに固まってしまったりします。
その結果、「指示通りに動けていない」と評価を下げられてしまうのです。

2. 雑談や社交が苦手

職場では、雑談や昼休みの会話、報連相以外の「空気を読むコミュニケーション」が重視される場面が多くあります。
アスペルガーの人は言葉以外の感情や意図を読み取るのが苦手なため、「無愛想」「協調性がない」と誤解されがちです。

本当は一生懸命やっていても、その「見え方」のせいで評価されにくくなることがあります。

3. 同時に複数のことをこなすのが難しい

一つのことに集中できるのはアスペの強みですが、同時進行や急な予定変更には弱い傾向があります。

職場では「マルチタスク」「臨機応変」が求められる場面が多いため、混乱したり、優先順位の判断で苦労したりしてしまい、「段取りが悪い」「要領が悪い」と言われてしまうことも少なくありません。

4. 感覚過敏・ストレスへの耐性

音や光、人の話し声などに敏感な「感覚過敏」を抱える人も多くいます。
職場の雑音や明るすぎる照明、人の多い空間にいるだけで、常に疲弊してしまうのです。

その疲れは目に見えにくいため、周囲には理解されにくく、「集中力がない」「やる気がない」と誤解されることもあります。


アスペルガーだから仕事ができないわけではない

「できない」のではなく、「合っていない」のです。

アスペルガーの特性が仕事に向かないのではなく、今の職場や働き方が、あなたの特性とマッチしていないだけ
向いている環境に出会えば、アスペの強みを活かして生き生きと働くことは十分可能です。


アスペルガーの強みを活かせる仕事の特徴

特性に合う仕事の傾向

  • 明確な指示・ルールがある
  • 一人で完結できる作業が多い
  • 雑談やコミュニケーションが少ない
  • 環境が静か・安定している
  • 特定分野の知識や技能を活かせる

具体的な職種例

  • プログラマー・システムエンジニア
  • データ入力・経理・事務作業
  • デザイナー・クリエイター(一定の自由度と個人作業)
  • 研究職・分析業務
  • 工場などのライン作業
  • フリーランスや在宅ワーク

一人で集中できる時間が多い職種では、アスペルガーの集中力・几帳面さ・正確性が高く評価されます。


アスペルガーで仕事に悩んでいる人へできる対策

1. 自分の特性を客観的に把握する

「何が得意で、何が苦手か」。
紙に書き出して整理するだけでも、自分を俯瞰できるようになります。

たとえば、「集中力が続く」「ルールのある環境が安心する」「人と話す時間が少ないほうが楽」といった自分の傾向を明確にしておくことで、次の行動につながります。

診断を受けていない方でも、発達障害に理解のあるカウンセラーや医師に相談することで、自己理解を深めるサポートを受けることができます。

2. 自分に合った職業・働き方にシフトする

今の職場が合っていないと感じるなら、働き方や職種を見直すことも大切です。

特性に合わない環境で無理を続けるよりも、自分の強みを活かせる場所に身を置いた方が、心もパフォーマンスも安定します。

  • 一人で作業できる仕事
  • 明確なルールやマニュアルがある仕事
  • 雑談やチームプレーが少ない仕事
  • 在宅やリモートが選べる仕事

など、選択肢は広がっています。

転職を検討することは逃げではありません。
むしろ「適職を探す前向きな行動」です。

3. 支援制度を活用する

発達障害者職業センターや就労移行支援など、アスペルガー傾向のある方を対象としたサポート機関が全国にあります。
職業適性の相談、職場実習、履歴書の書き方、職場とのマッチングまで、手厚く支援してくれる場所もあります。

一人で抱え込まず、外部の力を借りることも大切です。


まとめ:できない自分を責めないで

アスペルガーの人が仕事でつまずくのは、本人の能力不足ではなく、環境とのミスマッチによるものがほとんどです。
私自身も、向いていない職場で苦しみ、自信をなくした経験があります。
でも、自分の特性を理解し、働き方を変えてからは、驚くほど楽になりました。

あなたは「仕事ができない人」ではありません。
「今の働き方が、あなたに合っていないだけ」です。

無理に自分を変えようとせず、「自分らしく働ける場所」を探してみてください。
きっと、あなたの力を必要としている場所がどこかにあります。


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